ビギナー編集者に贈る~文章校正が上手くなる厳選5ポイント

ビギナー編集者に贈る~文章校正が上手くなる厳選ポイント5項目

校正、校閲といえば出版や広告、近年ではウェブ媒体など、活字を用いたメディアの制作には欠かせない作業ですね。ライターや編集者なら、誰もが経験しているはずです。

もっともこの作業、勉強したいと考えても意外に情報が少ない。テキパキと進めて限りなくノーミスで行うためにはどうしたらいいのか?経験が浅いうちは試行錯誤するものですが、学ぶための参考が足りないことでますます迷う。そんな方もいることでしょう。

そういった悩める編集者やライターのために、今回は校正・校閲を上手に行うためのポイントを解説。その作業がいかに大事か、おろそかにすればどんな恥やホロ苦い報いが待っているのか。興味深いエピソードも含めてお話しましょう。

1.知っていますか?「校正」「校閲」の違い

読者へ問います。校正と校閲が“似て非なるもの”であることは、ご存じでしょうか?中小出版社やウェブ媒体運営会社に勤務、あるいはそうした会社が取引先というライターなら、これを一緒くたに行っているケースがほとんどのはず。

これらの作業、じつはまるっきり意味合いが異なります。

  • 校正=文字チェック
  • 校閲=文章チェック

分かりやすく端的に述べるなら、以上のような表現となります。

経験者には蛇足ですが、作業工程自体はどんなものか? ここでは一般的な紙媒体を例としますが、まずは校正のケース。

1-1.校正とは?

最初に原稿自体をチェックして誤字脱字、印刷ミスなどの間違いに赤字を入れます。ゲラ刷り(試し刷り)ができたら、次に当初の原稿の修正部分が指示どおりに直っているかチェック。ここでも誤りがあれば、再度同じ工程を繰り返します。

前回の工程で修正された部分とゲラ刷りとの照合を幾度か行い、チェック漏れの有無を調べていくわけですね。

1-2.校閲とは?

対して校閲は文章のチェック。対象は広範囲で、しかも深く細かい。慣用句の用法、熟語の使い方、地名や人名の誤り、文章内容の矛盾や事実確認などなど。

流し読むだけなら見落としそうな誤りに気づく必要がありますから、読解力はイロハのイ。徹底的に読むだけでなく固有名詞や年号、日付などを調べるケースもあるため、非常に地道で根気のいる作業です。

東京都内で印刷、出版関連会社が集中する神楽坂界隈には校正・校閲を専門に行う業者が多数存在。これを専業とした事業が成り立つのですから、それだけ重要性の高い作業であるといえます。

といっても、中小、零細出版社の場合は校正や校閲にコストや時間をかけられず、外部へは出さずに著者(筆者)と編集者が共同で行うケースがほとんどです。社の方針によって、校正の回数自体が少ないというケースも。筆者自身、そうした出版社との取引で不完全な校正による苦い思いを味わっています。

1-3.これは恥ずかしい・・・・!~S県人造湖のずさんな案内板

校正会社に依頼したのかどうかは不明ですが、天下の自治体ですら校正におけるイージーミスを犯しています。

S県にある巨大な調整池(人造湖)が、なにゆえつくられたのか。由来を記した案内板なのですが、そこに面白い記述があるのです。

“S湖はそれらの治水のため・・・・(略)・・・・目的に指定ます。”

お分かりですか?

知っている人は知っているトリビア。

“しています”と書きたかったのでしょうが、なんらかのミスで“してい”を漢字に変換してしまっているのです。

設置してかなり時間が経過しているようでしたが、2009年8月の段階で、間違いのままでした。

仮に現在でもそうなら、お恥ずかしいハナシです。

校正ミスはこのように、その仕事ぶりを疑われ、名誉を損なう元となるのです。

2.ベテランに学ぶ校正・校閲のポイント5~コツをつかんで精度上昇!

冗談のようなホントの一例はさておき、文章校正のポイント。ビギナーの方にこそ、覚えてほしいことがいくつかあります。

今回の原稿を作成するにあたり、アドバイスをくれたのは筆者の友人。十数年に渡り単行本の編集に従事したキャリアを持ち、校正・校閲の正確さとスピードは、専門業者にも劣りません。そういうベテランのコツとテクニックを、披露したいと思います。

2-1.必ず原稿をプリントアウト

近頃では紙媒体でもデータ入稿が当たり前になっていますが、PC画面のまま校正に入るのはご法度。ディスプレイで見るのと紙で見るのとでは、大きく印象が異なるからです。

デザインの分野でも同じですが、ディスプレイで見たのと実際に紙ベースで出力した場合とでは色味が変わります。ディスプレイのスペックや、機能の限界に制限を受けるからです。これによるクレームを避けるために、いったん印刷会社で紙に出力して色校正を行うケースもあります。

文章の場合でも、テキストエディタはもちろんワードでも、ディスプレイでは文面全体を俯瞰することができません。上下左右いずれかにスクロールしながらの校正は集中を妨げられ、ミスを誘うケースが多いものです。

校正に入る前にはプリントアウトが必須です。プリントしたものに赤字を入れて初校とし、再校以降もプリント。これを基本としてください。

2-2.見るだけでなく音読する

文章を目で追いながらチェックすると、なぜかつい、急ぎ足になってしまう。校正を行いながら、そんな不思議に気づいたことがありませんか?

目視や黙読では、知らず知らず読み進めるスピードを上げてしまいがち。誤字脱字の見落としをしてしまう危険性が増えます。

筆者自身も自分の単行本を校正(著者校)していて感じたのですが、このケースで上記の間違いを犯しやすくなります。自分で書いたものだけに、どこか心に油断が生じてしまうのです。

「大丈夫だろう」

「さっき読み直して内容ごと修正したから」

そんなふうに思い込み、さっさと原稿を手放したい衝動に駆られているせいもあり、知らぬうちに手を抜いてしまいがちなのです。

文章自体のリズムではない、そのときの自分自身の心中のリズム。これをもって読むせいだと気づいたのは、キャリアをだいぶ重ねてからでした。

この危険を回避する方法は音読。目で追いながら同時に声に出して読むことで、文章自体のリズムと同調できます。必然、黙読するだけのやり方よりもスローになり、ゆっくり読める。誤りに気づけば読んでいる声も止まる。より以上に気づきやすいわけですね。

とくにビギナーこそやるべきだとベテラン編集者も同意してくれました。

文章の音読は、校閲の観点からも推奨できます。文章のリズムを把握しながら読むので、まだるっこしい言い回し、読みにくい部分に気づきやすいのです。第三者にとって読みやすいか否かが分かりますから、文章力を上げることにもつながります。

2-3.文章の内容は追わない

ここでは校閲の観点を一切考慮しません。純粋に文字校正のみ、完璧に行いたいときの方法です。

文字のみチェック対象とする際に文章内容を追うと、どうしても頭が内容重視に傾きます。読者同様の第三者の立場になれる点はよいのですが、チェックマンとしての文字に対する厳正な視線は失われがち。仮に漢字が間違っていたとしても、微妙な違いに気づかないケースが多いものです。

たとえば以下のような同音異義語。

  • 制作⇔政策⇔製作
  • 行く⇔往く⇔逝く
  • 指す⇔挿す⇔差す
  • 柿⇔牡蠣
  • 会う⇔合う
  • 無視⇔虫
  • 小学生⇔奨学生

データ入稿主流の現代、キーボードで漢字変換する際にこういった選択ミスを起こしやすくなっています。デジタル時代がもたらした副作用といえますが、原稿内容に気を取られ夢中で読んでいると、案外この種の誤りに気づきません。文章内容に気を取られたら、注意力が散漫になる。無理からぬことといえます。

校正とは、あくまで文字チェック。文章内容の校閲を行わず、純粋に校正のみまかされたなら、元原稿とゲラを比較しつつ、文字のみ追うようにしてください。

原稿を、文章だとは考えず、記号の羅列だと思い込む。そんな心構えでもいいですね。

2-4.他者の目を借りる

三人寄れば文殊の知恵といいますが、校正においても一人よりは二人。複数人で行うのがベターです。

校正を自分一人のみで行い、見過ごしてしまった箇所。第三者のチェックが入ると、漏れを見つけてもらえるケースが多々あります。

内容の良し悪しでも同じですが、書いた本人でない第三者のほうが、より以上にチェックマンとして厳しい視線を向けられるものです。当初から他人の原稿校正を行っているケースでも「一度やっているから」「初校でしっかりチェックしたから」との感覚があれば、油断するのが人情です。

校正は、客観的な視点で行うべきもの。ゆえにこの方法を採用するのは、むしろごく当たり前とすらいえるでしょう。

ブログ記事の場合や、ネット媒体で校正にまで人数や時間を割けないケースでも、できれば第三者に積極介入してもらうことを推奨します。家族や友人、恋人といった身近な人でOK。誰か他者に読ませることで、誤字脱字のみならず、よりよい内容へリライトするためのヒントが与えられることもあるはずです。校閲の意味合いでも、他者の目が役に立つわけです。

客観視によって成功した顕著な例が、シルベスター・スタローンの出世作となった映画『ロッキー』です。

50回もオーディションに落選し不遇を囲っていた若き日のスタローンが、この脚本を映画会社へ持ち込み主演をも演じてスターダムにのし上がったのは有名なエピソード。ですが、じつは当初書かれた脚本は、まったく違う結末でした。

脚本執筆直後、スタローンはまず夫人に読んでもらったのですが、ラストシーンが不評。どうやらロッキーは人種差別的な言動に怒った末、クライマックスとなるはずの敵役アポロとの試合を放棄して会場を去るという暗いラストだったとのことで、

「私はこんなロッキー嫌いよ」

スタローンは夫人に、そんなダメ出しを食らったそうです。

それからスタローンはラストの部分を全面的に書き直し、誰もが周知のハッピーエンドに改変。これが、アカデミー賞作品賞や監督賞に輝きアメリカンドリームの象徴ともされ、今なお名作と評価の高いROCKYとなったのです。

陰惨、暗いラストシーンだったら。結果論ですが、はたしてROCKYはROCKYとなりえたでしょうか?少なくとも、感動の名作と呼ばれる現在の評価は、得られなかったと思われます。

第三者の目は冷徹です。その冷徹さこそ真の客観であり、チェックマンの目と呼べるのです。

2-5.タイムラグを設ける

第三者の客観視と類似した方法です。

執筆や初校の終了からタイムラグを設けることで、自身が客観的な視点に立つ。そういう方法論で、学生時代の作文の宿題などを思い起こすと理解しやすいはず。

深夜に書き上げた読書感想文などは、なぜか素晴らしい出来映えに感じられるものです。リアルタイムで読み返すとスゴイ文章が書けた!と思うのですが、翌日読み返すとつまらない。どうしてこんなモノを良いと感じたのか、自分ながら摩訶不思議。夜の魔力といいますか、キツネに化かされたような感覚になった経験を、みなさんしていないですか?

書き上がった直後というのは、一種の興奮状態です。その高ぶった感覚とは、ナルシズムに陥った状態ではないか。筆者は、そんなふうに考えます。だからこそ、どんな文章でもステキと感じてしまうのではないでしょうか。

こうしたナルシズム、ひとりよがりの魔力から脱却するには、タイムラグを設けるのが最適なのです。いったん頭を冷やす、冷静さを取り戻すわけですね。

理想的には翌日まで原稿を放置し寝かせるくらいの間隔がほしいですが、時間的制約があるのなら最低1~2時間。原稿のことを忘れ去り、他の作業に時間を費やしてから取りかかるのがベターです。

内容的には校閲の際に役立ちそうに思えますが、文字校正においてもこのタイムラグ作戦は使えます。とくに自身で執筆から校正まで行うライター、編集兼ライターや記者の方におススメのやり方です。

3.結びにかえて~校正ツールは使えるか?

ソフト付随の機能や、ネット上の無料サービスを利用して校正する方法もあります。マイクロソフトワードの校正機能がとくに有名です。

しかし、ネット上で公開されている無料ツールは、正直信頼性に欠けます。筆者も試験的に使ってみましたが、すでに有名になっているツールですら完成度の低さにガッカリさせられました。

たとえば「Enno」ですが、これは漢字変換ミスや誤字脱字、文字化けなどのチェックが可能とされています。ところが、以下の文章を入力してもエラー箇所が存在しないと判断されたのです。

ボストンレッドソックスといえば非情に歴史の古いメジャーリーグ糾弾です。

ホーム球状のフェンウェイパークといえば、なんといっても名物はグリーンモンスター。左翼の高いフェンスが右打者のホームランせい辺りを単なるフェンス直撃に代えてしまいます。

太字にしてある語句が誤りであることは明らかで、人間の目でならすぐに発見できるレベルです。これに無反応となると、信頼性に疑問符がついても仕方ないのではないでしょうか。

Enno

対応できなかったのは、ユーザーによる変換ミスなどの例を蓄積していくタイプのためでしょうか。推奨しているサイトが散見されますが、現状の完成度では使えません。筆者は首を傾げてしまいます。

Google検索で「文章校正 ツール」と入力するとトップに出てくる「文章校正ツール so-zou.jp」でも同様の結果でした。

文章校正ツール so-zou.jp

ヒューマンエラーがあるとしても、このレベルなら人間の目のほうがよほど信頼できます。

最終的には、やはり人間。技術を学び、なじみ、徐々に腕を上げていく。これが理想!

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