【医師ライターが教える】医療記事作成で活用する8つの情報ソースと、収集の際気を付ける2つのこと

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医療情報は正しいものと誤っているもの・過剰な表現をされているものが入り混じっています。インターネットの情報は真偽のほどが確かではないものが多くあります。しかし実は書籍の場合も必ずしも正しいと言えない情報が氾濫していることもあるのです。医療記事を作成するうえではどのような情報ソースを活用すればよいのでしょうか?

実は書籍の信頼性も十分ではない?

一般的に紙の書籍の情報は信頼性が高いと考えられています。しかし、中には根拠に乏しく、インターネットメディアの悪い医療情報と同じくらい信頼性に欠ける情報も存在します。例えば書籍の中には「がんは必ず治る」といった文言が含まれているものがあります。しかし現在の医学では、がんを100%治療できる治療法は存在しません。近年流行した「水素水」に関しても同様です。水素水自体は研究が進められており、水素水に関する論文も存在します。しかし本当に効果があるかどうかに関してはまだ根拠と臨床試験の結果が足りず、不透明なところがあります。このように書籍であれば必ずしも信頼できる情報源になるとは限りません。しっかりと自分でその情報が信頼できるかどうかを確認する必要があります。
反対にインターネットメディアは一般的に信頼性が低いと考えられています。確かにインターネットで見つけることのできる情報は玉石混合であり、信頼できる良い情報と信頼できない悪い情報が入り混じっています。しかし中には本当に信頼性と正確性の高い情報も存在し、有効な情報ソースとすることができます。
紙の書籍もインターネットメディアも信頼できる情報と信頼できない情報が入り混じっているのは共通しています。医療ライターとして良い医療情報を発信していくためには、信頼できる情報ソースを見つけるスキルは必要不可欠です。

信頼できるインターネットの情報ソースとは

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信頼できる情報とは「事実だけを客観的に述べたもの」です。主観や想像、推測、曖昧な表現などが含まれるとそれは信頼できる情報ではなくなります。信頼できる情報を発信しているインターネット上のメディアには国家省庁のサイト、各学会のサイト、大学や研究機関のサイトなどがあります。これらのメディアは基本的に事実だけを客観的に提示して、主観などが入っていないため信頼できます。
国家省庁のサイトだと、医療記事を執筆するうえで「厚生労働省」のものがとても有用です。厚生労働省は国民の生活に関わる様々な統計を調査しており、年次報告をしています。医療記事を執筆するうえでとくに有用なのが以下のページでしょう。

厚生労働省 統計情報・白書 各種統計調査 厚生労働統計一覧
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/

このページでは厚生労働省が調査した各種統計を閲覧することができます。例えば乳幼児の栄養状態に関する記事を執筆する際は、「乳幼児栄養調査」の統計が役に立つでしょう。

ヘルスケア寄りの記事を執筆する際には

厚生労働省 政策について 分野別の政策一覧 健康・医療 健康 栄養・食育対策 日本人の栄養摂取基準
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
が役に立ちます。

厚生労働省のこれらの統計データは客観的な事実のみが述べられており、参考にすることで具体的な数値を記事内で示すことができます。具体的な数値を記事内で示すことで説得力が増し、記事全体の信頼性・正確性を高めることができます。記事を執筆する際にはなるべく具体的な数値を示すようにするとよいでしょう。

また日本〇〇(整形外科、内科、外科など)学会といった特定の診療科の学会のサイトも信頼できる情報ソースとして有用です。それぞれの診療科の専門家が情報を発信しているため、信頼性がとても高く客観的な事実のみを述べています。ここでは学会の中でも特に詳細に症状や病気の解説をしている日本整形外科学会のサイトを紹介します。

公益社団法人 日本整形外科学会 症状・病気を調べる
https://www.joa.or.jp/public/sick/index.html

このサイトでは症状や病気をイラストつきで分かりやすく伝えることを目的としています。表現も簡単なものが多く、特に医療記事執筆初心者に大きな味方となるでしょう。今回は内容がとても充実しているため、日本整形外科学会を紹介しました。整形外科以外にも内科、外科、皮膚科、消化器、循環器など様々な学会が存在しています。一般向けの情報の充実度合いには差がありますが、どの学会も医療記事を執筆するうえでよい参考となります。

そのほか大学や企業などが発表する論文も信頼性の高い情報ソースとなります。論文はなかなか見つけづらいですが、以下のようなサイトが便利です。

日本の論文検索サイト http://ci.nii.ac.jp/
海外の論文検索サイト https://www.ncbi.nlm.nih.gov/

ただしこれらのサイトで見つかる情報はあくまで論文です。専門性が高く、文章が難解なことも多く読みづらいこともあるかもしれません。これらの論文の信頼性は高いですが、医療記事として発信する際は一般消費者でも分かりやすいように、かみ砕いた表現にすることも重要です。

病院やドクターのブログの情報の信頼性

意外なようですが、病院やドクターのブログの情報の信頼性は必ずしも高いものではありません。情報発信者が利益を求める法人であること、様々な考えを持つ個人であることは情報になんらかのバイアスをかけてしまい、公平な情報とは言い難くなってしまいます。
もちろん正しい情報を発信している病院やドクターも存在しますが、それを見分けるのはなかなか困難です。情報が正しいか誤っているかバイアスがかかっているか判断が付かない場合はなるべく情報ソースとして利用しないほうが良いでしょう。
ただし大学病院や国公立の病院は公的な役割としての側面が強いため、情報は客観的で信頼できるものとなっています。特に慶応義塾大学病院が運営している「KOMPAS」という医療・健康情報サイトは情報の網羅性が高く、非常に有用です。

慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト KOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/

個人が行っているサイトやキュレーションメディア、まとめサイトの情報の信頼性

個人が行っているサイトやキュレーションメディア、まとめサイトの情報の信頼性は残念ながら低いと言わざるを得ません。情報ソースとして参考にするのはなるべく避けたほうがよいでしょう。まず、第一の問題点として匿名のライターが執筆していることが多く、どんな属性の人が執筆をしているかが不明瞭なことが挙げられます。医療従事者が執筆しているのか、それとも医療とは関係のないライターが書いているのかの判断が付かず、情報の信頼性・正確性も不明瞭なことがほとんどです。
第二の問題点としてこれらのサイトは利益追求や閲覧者の獲得など何らかの目的があることです。目的があること自体は決して悪いことではありません。しかし、それらの目的を達成するためにインパクトの強いタイトルや誇張表現を使っていることもあります。過度な誇張表現で修飾された情報は信頼性と正確性が低下します。またその誇張表現を正しいものとして受け取ってしまうと、どんどん情報に齟齬が出てきます。これらの理由により、個人が行っているサイトやキュレーションメディア、まとめサイトなどの情報を情報ソースとして用いるのは避けるようにしましょう。
記事を監修する医師が付いていればある程度は安心ですが、それでも情報の扱いには注意するようにしましょう。最善は正しいかどうか自分で判断が付くようになることです。

自分の知識

医師や薬剤師、看護師などの医療従事者の場合、自分の知識や経験を記事に反映させるのも信頼性・正確性の向上に繋がります。現場での生きた知識であるため、説得力が高く、読者となる消費者にとって受け入れやすいものとなるでしょう。ただし医療技術は日進月歩で進んでいきます。「自分の知識や経験は本当に正しいのか、古いものではないのか」という疑いを持つ必要は常にあります。医療従事者が記事執筆の上で、自分の知識や経験を用いる際は他の情報源とダブルチェックを行い、間違いがないようにする癖をつけるようにしましょう。

医療記事を執筆する場合のおすすめの書籍

たとえ紙媒体の書籍であっても情報の信頼性が低いものも存在します。また書籍は保管に場所を必要とし、内容の検索性も低いため情報源としては扱いにくいこともあります。一方で書籍は情報量が多く、分かりやすい表現をしているものも多く、うまく使えば非常に有用です。参考にする場合はできるだけ医学書やそれに準じた信頼性の高い書籍を選ぶべきでしょう。私は医師ライターですが、その立場から見ても分かりやすく、網羅性の高い書籍を紹介します。

今日の治療方針 (株式会社医学書院 出版)
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/fair/tt2017/index.html

今日の治療方針は株式会社医学書院が出版している医学書です。非常に高い網羅性が特徴で、日常的な診察に必要になる疾患のほとんどが掲載されています。それらの疾患の概要と診断、治療法などが記載されており、疾患の全体的に把握するのに適しています。
また今日の治療方針の優れているところが、紙媒体の書籍を購入すれば電子版も併せて利用できる点です。今日の治療方針はその性質上、網羅性が高い代わりに検索性に劣っていました。しかし電子版を合わせて利用することで、網羅性と同時に検索性も高く、必要としている情報を瞬時に探すことができるようになります。
値段は19,000円(税別)と少々高いですが、医療記事を執筆するうえではとても有用な参考書となります。

病気が見えるシリーズ (株式会社メディックメディア 出版)
http://www.byomie.com/

病気が見えるシリーズは株式会社メディックメディアが出版している医学書です。シリーズであり消化器・循環器・糖尿病、代謝、内分泌・呼吸器・血液・免疫、膠原病、感染症・脳、神経・腎、泌尿器・婦人科、乳腺外科・産科・運動器、整形外科の全11冊が発売されています。
病気が見えるシリーズの特徴は非常に分かりやすいことです。イラストやグラフ、検査画像などを多用しており、視覚化が徹底されていて理解がしやすい構成となっています。病気が見えるシリーズは医師向けの医学書ではなく、医療従事者全般に向けた医学書です。分かりやすさを重視しているため、医学の知識が少ない人でも安心して読むことができます。
1冊あたり3,000円から3,800円で全11冊ということもあり、そろえるのに少々苦労するかもしれませんが、医療ライターを目指したい人にはぜひおすすめです。

情報収集の際に気を付けるべきこと① 情報の新しさ

医療情報を収集する際には「情報の新しさ」を常に意識するようにしましょう。医療技術はどんどん進んでいくため、今まで主流だった治療法が違う治療法に置き換わることもよくあります。1年前の常識が覆ることもよくあるため、なるべく新しい情報を収集する必要があります。
情報ソースの日付には常に注意を払い、なるべく最新の情報を見つけてくるようにしましょう。インターネット上の情報は日付が分からないことも多いため、情報の新しさを重視する際は書籍が役に立ちます。

情報収集の際に気を付けるべきこと② ダブルチェック

医療情報を発信するうえで最も意識しなければならないことは、情報の正確性と信頼性です。情報ソースから参考にした情報が本当に正しいものなのか、常に疑う姿勢を身に着けるようにしましょう。情報の信頼性・正確性を担保するうえで有効なのがダブルチェックを行うことです。
参考とした情報ソースとは別の信頼できる情報ソースを見つけ、お互いの情報に齟齬がないか確認するようにしましょう。ダブルチェックを習慣化することにより、情報の信頼性と正確性が高まり、また情報の新旧による誤りの可能性も低下させることができます。

まとめ

  • 信頼性が高いと思われる書籍にも根拠に乏しい情報はある
  • 信頼性が低いと思われるインターネットメディアにも信頼性の高い情報はある
  • 省庁、学会、大学、医学書などの研究機関など信頼できる情報ソースから、参考となる情報を見つけるスキルが医療ライターには不可欠
  • ブログやキュレーションメディア、まとめサイトなどは信頼性が高いとは言えないため、情報ソースとして用いないことが望ましい
  • 医療従事者であるならば、自分の知識や経験を記事に反映させることも説得力の向上に繋がる
  • 医療技術は日進月歩のため、情報の新しさには常に注意を払うこと
  • 参考とする情報が本当に正しいのか疑う癖をつけて、ダブルチェックを習慣化することで情報の信頼性と正確性は高まる