ビジネスシーンで欠かせないステップ、見積もり→納品→請求
これらの場面ではそれぞれ「見積書」「納品書」「請求書」が求められます。これらを効率よく行うために、今、クラウド型サービスが注目を浴びています。
フリーランスの場合、仕事の場が常に事務所・自宅でないこともあります。カフェやコワーキングスペースにいることもあるでしょう。このようなとき、外出先でもこれらの書類を作成することのできるクラウド型サービスはとても便利です。
今回は、クラウドサービスの中でも、特徴あるものをご紹介します。
目次
1.「書類」に関するおさらい
これはもう、いわずもがな、ですが、フリーランスならずとも商取引を行ううえで必要なのが次の書類です。
1-1.見積書
仕事の依頼を受ける前、「これだけのボリュームの仕事をしてもらったとき、幾らくらいになりますか」という問いを受けます。これに対する“答え”になるのが「見積書」です。クライアントになってくれるであろう会社(人)に対し、わかりやすく記述するのが“鉄則”ですので、工程ごとの見積もり金額を記入し、合計額を導き出すとより好感度が上がるでしょう。
さらに、別途費用が発生する項目があれば、それについても注意書きという形式で追加しておくと、後のトラブルを招くことも少なくなりますので、欠かさず記載することをおすすめします。
また、この見積書がいつまで有効なのかを記載しておくとよいでしょう。というのも、仕入れや外部サービス利用といった請負側でいつまでも“その金額を約束”できないものが生じる場合があるからです。
1-2.納品書
実際に仕事を請け、それを成果品として納品するときに添えるのが「納品書」です。これは、請求書と直結するものですので、請求書とほぼ同等のことを記載しなければなりません。
- 書類作成者(成果物を納品した人・会社)
- 取引が行われた年月日
- 取引の内容(具体的に)
- 取引した金額(消費税も記載)
- 納品した相手先(納品を受けた人・会社)
ここでもまた、取引の内容(工程ないしは文字数など請求額を求めるための基礎となるもの)とそれぞれの金額を分け、それをすべて合計した金額を示すとわかりやすい納品書となります。
また、仕事に着手してから追加料金などが発生してしまい、相互相談の上、請求金額に計上してもよいとされたことがあれば、それもまた明示しておくとよいでしょう。
1-3.請求書
成果物と納品書を収めたら、クライアントはその成果物を検収します。数量・仕様・品質などクライアントが求めたものであるかどうかのチェックが検収です。この検収をパスすれば、次は請求書の出番です。
請求書には、上記「納品書」と同じことを記載しますが、異なる点がいくつかあります。
- 請求日の記述(納品書に記載した納品日と異なるとき/月末締めと定められているとき)
- 振り込んで欲しい銀行口座(銀行名・支店名・口座番号など)の情報を追加
- 消費税別の場合は、消費税欄を設け該当額を記載
- 契約の段階で定めた支払期限の記載
基本的な記載事項は、国税庁のサイトでも確認できます。
2.面倒な見積書・納品書・請求書はクラウド型サービスで解決!
このように、ひとつの仕事で最低でも3つの書類を作らなければならないのが、フリーランス(ないしは会社)です。特にフリーランスの場合、できるだけ事務作業に手を煩わされることなく“本業”に徹したいところではありますが、これらの作業なくしては自身の仕事の対価を得ることができません。
そのような問題を解消してくれるクラウド型サービスをご紹介します。
2-1.freee
いわずと知れたクラウド型会計ソフト「freee」。もしも見積書・納品書・請求書から帳簿付け、確定申告まで一貫して行いたいのであればfreeeは選択肢の上位に入れると良いでしょう。
見積書・納品書・請求書の作成のみならず、毎月の経費の仕分け、資金繰りのレポート(グラフ表示)まで行ってくれます。これらの機能を上手に使いこなすことができれば、経営状況も一目瞭然。さらには、専用アプリがありますので、ちょっとした隙間時間で使用した必要経費の入力もラクに行えます。
手に取れる“現金”が動くことのほとんどない近年のビジネスシーンに合わせ、事業用口座やクレジットカードと連携させることができるのも特徴です。
【費用】
- 「スターター」1カ月1,180円ないしは1年11,760円/確定申告を目指す方向け
- 「スタンダード」1カ月2,380円ないしは1年23,760円/経理作業効率化+確定申告を目指す方向け
2-2.請求業務クラウドサポート
もしも、成果品を実際の“モノ”で送ることが多いのであれば、ヤマト運輸の提供する「請求業務クラウドサポート」も便利です。というのもそこはヤマト運輸、納品書を作成した段階で宅配便送り状をクリックひとつで作成することができるのです(ヤマト運輸との間で事前に運送契約をしておく必要があります)。
また、作成した書類(見積書・納品書・請求書・領収書)をメールでクライアントへ送信できます。お金の動きよりも、モノの動きの面での利便性を求めるなら、この請求業務クラウドサポートも選択肢の一つに入ることでしょう。
【費用】
- 「ライトプラン」月額料金無料/取引先登録5件まで
- 「スタンダードプラン」月額料金980円/取引先登録6件以上
※送り状発行には別途「送り状発行システムB2クラウド」に登録、ヤマト運輸との運送契約が必要
http://www.kuronekoyamato.co.jp/campaign/seikyu_cloud/index.html
2-3.MFクラウド請求書
紙での書類交換を希望するクライアントが多い場合、MFクラウド請求書が便利です。見積書・納品書・領収書作成がクラウド上でできるうえ、作成した書類を1通あたり最高190円で直接送ってもらえます。
確かに190円といえば割高なイメージはありますが、仕事が多忙になりやすい月末にこれらの作業を“丸投げ”でき、封筒や切手の購入・書類封入・ポスト投函といった作業から開放されますので、いくつかのクライアントをかけもちしているフリーランスにはありがたいサービスといえます。
【費用】
- 「フリー」月額料金無料/取引先登録3件まで(郵送依頼不可)
- 「スターター」1カ月500円/取引先登録15件まで(郵送1通あたり190円)
- 「ベーシック」1カ月2,980円ないしは1年32,780円/取引先登録無制限(郵送1通あたり180円)
- 「プロ」1カ月5,980円ないしは1年65,780円/取引先登録無制限(郵送1通あたり170円)
※プランによりサービス内容が異なる
https://invoice.moneyforward.com/
2-4. CLOUD PAPER
どこにいても何をしていても、たとえ手元にスマートフォンしかなくても見積書や請求書を作成することができるCLOUD PAPER。登録と同時に各種書類のデザインを決め、過去のクライアントの見積もりデータをCSVでインポートしておけば、類似の仕事の見積書を求められたときに瞬時に書類作成することが可能です。
提出した見積書が見積書請求先から承認され、受注となれば、クラウド上でプロジェクト管理に移行できます。また、見積書ごとに受注済/納品済など、請求書ごとに送付済/入金済などのステータスを入れることができますので、見積・受注・納品・請求までの流れの中での“取りこぼし”を未然に防ぐことができます。
【費用】
- 「ライト」1カ月1,000円/クライアント数30社まで(郵送1通あたり180円)
- 「スタンダード」1カ月3,000円/クライアント数100社まで(郵送1通あたり170円)
- 「プレミアム」1カ月5,000円/クライアント数200社まで(郵送1通あたり170円)
※プランにより利用できるメンバー数が異なる
2-5. Misoca
複数のフリーランスでチームを組むことがある方には、Misocaもおすすめです。最近では、実力あるフリーランスを結びつけ、ひとつの仕事を数人で受注できるようにするサービスもありますので、今後「チームで受注、チームで請求書」という形も増えていくことでしょう。
このようなケースに対応してくれるのがMisocaです。プランにより、2名ないしは5名まで同時利用できますので、チームを組んだメンバー全員で「お金のダブルチェック」を行えます。
また、無料プランであっても、クラウド会計サービスの弥生、freee、MFクラウド会計と連携させることができます。既にこれらのサービスを利用しそれに慣れている方にとっては、使い勝手の変化もなく便利です。
【費用】
- 「無料プラン」月額料金無料(月間請求書作成5通まで)
- 「プラン15」1カ月800円ないしは1年8,000円(月間請求書作成15通まで/最大2名で利用可能)
- 「プラン100」1カ月3,000円ないしは1年30,000円(月間請求書作成100通まで/最大5名で利用可能)
2-6.クラウド請求書ソフトCrew
クレジットカードで支払いをしたい、というクライアントが現れたときどう対応するのがよいでしょうか。クラウド請求書ソフトCrewの出番です。Paypal(ペイパル)というサービスを利用することでクレジット支払いの環境をクライアントに提供できます。
見積書・納品書・請求書・領収書を作成するだけでなく、クレジットカードでの支払い環境を作ることができれば、支払い方にさえ縛られない快適な働き方が実現できるはずです。作成した書類は、メール送信はもちろんのこと、郵送の代行(有料)もしてくれますので、「どうしても紙で請求書が欲しい」といったニーズにもさっと対応できます。
会計事務所がタッグを組んで作られたクラウド会計ソフトCrewとの連携で経理の作業も軽減されますし、必要とあらば提携した税理士への相談も行えます。
【費用】
- 「無料プラン」月額利用料無料(クラウド会計ソフトCrewとの連携不可)
- 「ベーシックプラン」1カ月800円(クラウド会計ソフトCrewとの連携可能)
- 「コーポレートプラン」1カ月1,800円(現在使用中の会計ソフトとの連携可能)
※オプション「請求書郵送代行」1通あたり180円/ペイパル決済手数料2.9~3.6%+40円
2-7.ZOHO Invoice
数カ月を要するプロジェクトの場合、前払いや中間払いが行われることがあります。これに対応しているのがZOHO Invoiceです。残念ながら今のところ納品書には対応していないようですが、工数管理から請求書を発行する・Chrome拡張機能のタイマーを使い工数管理する・クレジットカード対応・専用アプリで請求書発行を行うといった珍しい機能を備えています。
また、クライアントとのやり取りをスムーズに行うための「クライアントポータル」が設けられていて、見積書への同意・支払いがワンストップで行えるという利便性もあります。
多くの言語と通貨へも対応していますので、海外のクライアントとやりとりをしなければならなくなったときにも重宝するサービスといえます。
【費用】
- 「無料プラン」月額利用料無料/最大顧客数5人
- 「ベーシック」1カ月7$/最大顧客数50人
- 「スタンダード」1カ月15$/最大顧客数500人
https://www.zoho.com/jp/invoice/
2-8.ツカエル見積・請求書オンライン
今回ご紹介したものの中で比較的柔軟に使用できそうなものが、ツカエル見積・請求書オンラインです。テンプレートも充実、好みにカスタマイズできますし、請求書発行を行った後、ステータス変更で入金額や請求残高の一覧確認ができ、「回収モレ」を防止するのに役立ってくれます。
既に会計ソフトの「ツカエル」シリーズを導入されている方なら、このツカエル見積・請求書オンラインも合わせて使ってみてはいかがでしょうか。
【費用】
- 「Freeプラン」月額利用料無料/帳票作成8枚まで(テスト期間用)
- 「Stdプラン」1カ月500円ないしは1年5,000円(一部機能使用不可)
- 「Proプラン」1カ月1,000円ないしは1年10,000円
2-9.みつもらー
まさしくフリーランス向けともいえるのが、このみつもらーでしょう。見積書作成も、フリーランスに良くある仕事内容から選び、金額を入力するだけのカンタン作業です。また、その仕事の単価を記憶しますので、繰り返し同じ仕事を請けるときに便利です。
また、見積書をクライアントにメール送信するときには、パスワード付きURLが発行されますので、セキュリティ面でも不安はありません。みつもらー内に残っているプロジェクト(仕事)のステータスを受注/請求済/入金済みに切り替えれば、請求忘れや回収モレを回避できます。
iPhone用アプリもあり、外出先でもさっと見積書を作成、メール送信することができますので、ビジネスチャンスを逃すことも激減することでしょう。
【費用】
- 「フリープラン」月額利用料金無料/見積書の保存10件まで(メール送信不可)
- 「プレミアムプラン」1年5,000円/見積作成・見積書保存無制限
2-10.board
見積書・納品書・請求書の作成、ステータス変更による仕事の管理に加え、クライアントごとに異なる請求タイミングを逸しないためのタスク通知がboardの特徴です。事前に「3日前」「当日」など設定しておけば、メールやSlack、chatworkへ通知してくれます。複数のクライアントから仕事を請ける方にとって、この機能はとても便利なものでしょう。
また、同じクライアントであっても、月内に別の案件を依頼されることもあるでしょう。「請求書は合算で」と依頼されるとき便利なのがこのboardです。もともとの請求書は個別に残しながら、合算した請求書を作成できますので、仕事内容の振り返りや予算管理もスムーズに行えます。
また、クライアントの求めに応じて紙ベースの書類発送も1通170円で利用できます。もちろん、他のサービスと同様、freeeやMFクラウド会計、弥生会計など会計システムに連携できますので、必要経費以外の基本的なお金の動きをこれらに取り込み、確定申告時の作業も最低限に抑えることができます。
【費用】
- 「Personal」1カ月980円(メール送信元がthe-board.jpとなる・通知機能が一部制限される)
- 「Basic」1カ月1,980円(外部ファイル保存1GBまで)
- 「Standard」1カ月3,980円(外部ファイル保存5GBまで)
- 「Premium」1カ月5,980円(外部ファイル保存10GBまで)
まとめ
フリーランスは、自身の仕事にまつわる事務作業を自分で行わなければならない“宿命”にあります。毎月税理士に依頼するほどの事業規模になれば別ですが、見積書・納品書・請求書発行など基本的に「自分のことは自分で」。となれば、やはりクラウド型サービスを上手に使いこなし、どこででも顧客対応できるようにしておくと仕事もスムーズです。
今回はサービスそれぞれの特徴をピックアップしました。ご自身の仕事内容や解消したい問題にあわせてチェックして「ベストなクラウド型サービス」選びにお役立てください。