キュレーションサイト全盛期の2016年頃は、1年のうちにサイト訪問者が3倍になったというメディアもありました。同時期に耳にするようになったのが、テキストや画像の無断引用問題です。ところが引用はルールを守れば、著作権侵害にあたらないこともあるのです。ライティングをするにあたり、どのような引用のルールを理解しておけばよいのでしょうか?
Contents
ライティングするなら知っておこう!記事引用のトラブル
ネット上のコンテンツは誰のもの?
ネット上にあるテキストや画像などのコンテンツは、雑誌や本と違って不特定多数の目に触れるためか、勝手にコピーしてもよいと考えてしまう人もいるようです。紙媒体と違って署名記事が少ないのも、権利が解りにくく拍車をかけている状態かもしれません。
特に問題になっているのがキュレーションサイトで、クライアント側から他記事の構成に似た内容を指示してくることも多いため、似たような切り口の記事が増えがち。もはやどれがオリジナルなのか、コピーなのか解らなくなっている状態です。そこで起こりうる著作権侵害についても、個人のブログなどは裁判費用をかけたくないということから、泣き寝入りする人が少なくないという状況に。
しかし紙媒体に掲載されたものだけではなく、デジタルコンテンツでも著作権は発生します。コンテンツは当然書いた人に著作権があるかと思いがちですが、実際はそのサイトを運営する業者に権利を受け渡す契約を交わしていることが多いもの。それでもライター側で誰の権利を侵害する可能性があるのかについては、敏感でいることに越したことはありません。
キュレーションサイト騒動から学ぶこと
2016年、とある大手キュレーションサイトが信ぴょう性の低い記事や、専門家ではない人が書いた医療記事を載せていたという騒動が持ち上がりました。その際に、キュレーションサイトにはオリジナルテキストだけではなく、他のサイトから持ってきた画像やテキストがふんだんに引用されていると知った人も、多いかもしれません。
こうした引用トラブルというと、まず浮かぶのはキュレーションメディアやキュレーションサイトと呼ばれる、いわゆるまとめサイトではないでしょうか。例えば有名なまとめサイト「NAVERまとめ」では、オリジナルテキストはタイトルとリードのみ。あとはほとんどすべてが引用でできているといってもいいくらいです。こうしたまとめサイトは、著作権侵害にあたらないのかというと、グレーゾーンであると言える状態です。
上述の騒動が起きる直前までは、儲かるビジネスモデルとしてたくさんのキュレーションサイトが生まれました。大多数はいわゆる生活を向上させる目的を持つ、ライフハック記事。そして大手のキュレーションサイトは著作権侵害にならないよう、引用に関しての法律に準じたレギュレーションを持っていました。ライターにレギュレーションを守らせることで、引用トラブルを未然に防いでいたのです。そうした管理の行き届いたキュレーションサイトは、あまり問題も起こっていなかったように見受けられます。
しかしクライアント側にきちんとしたレギュレーションがなかったり、ライターが専門家ではないのに人の生死にも関わる医療記事を書いていたという問題も少なくありませんでした。ルールに沿った引用を行わないことで、まだまだきちんとした対応が行われていないサイトも未だに多く見かけます。
コンテンツの著作権についてもっと意識を
本来はクライアント側が著作権に関してはもっとコンシャスになるべきですが、ライター側でも著作権侵害にならないように、意識を高く持つ必要があるでしょう。それには著作権とは何かという認識を持ち、正しい引用をすることでトラブルを防ぐことが必要です。
著作権とは、本や絵画、音楽などの創作された著作物に関する権利のことを言います。こうした権利を守るためには、著作物のコピーをしないとともに、引用も正しいルールにのっとって行う必要があります。
キュレーションサイトで引用はマスト?
大手キュレーションサイト向けのライティングを経験したことがある人は、そもそも引用はなぜ必要なの?と疑問に思ったことはありませんか?これは専門家のコメントを「引用」してくることで、記事の信ぴょう性を高めるという手法。これにより専門家に依頼しなくても、安価な原稿料で医療系の記事や美容系の記事を作成できるようになったというわけです。記事のクオリティを高めるためと称して、専門家の文章の引用はマストに陥っていたキュレーションサイトもあるほど。
それもこれも記事をなるべく安く大量に作り、広告を取ることで利益を得るというビジネスモデルのため。画像も紙媒体のように、カメラマンがオリジナルを撮り下ろしている費用も時間もかけられないので、ネット上にある雰囲気のよい画像を引用して、記事の見た目をアップさせるということがマストとなっているのです。もちろん著作権フリーの画像なら問題はありませんが、他人のサイトから引用だということが解らない状態で引いてきた場合は、明らかな著作権侵害にあたります。
テキストと画像引用のルールとは
著作権侵害とは何か知っておくべき
2016年のキュレーションサイト騒動が起こってからは、引用により法的な争いに発展しないよう、クライアント側もかなり気を付けるようになったと言えるでしょう。
著作権侵害とは、著作物を勝手にコピーして使ったりすることで、著作権者の権利を侵害することです。例えばもし美容の専門家がその理論を雑誌や学界に発表することで、利益を得るはずだったとしましょう。ところが、その内容を大量に引用した記事が先に出回ったことで、自分の記事がコピー扱いされたとしたら、これは著作権侵害と言えるかと思われます。後述しますが、引用の量、引用の必要性というのは、その引用がどういう意図をもって行われたかで判断できるものなのです。
引用するための条件を満たしてライティングを
著作権法32条1項の条文では「公表された著作物は、引用して利用することができる」という例外規定があります。つまりネット上にあるコンテンツも「公表された著作物」と言え、引用可能と受け取れます。とはいえ引用ルールを守って著作権侵害にならないようにするには、以下のポイントをチェックしましょう。
- 必要不可欠であるか
- オリジナルテキストが主であり、引用が従であるか
- 引用部分が本文とは区別されているか
- 引用部分に修正や加筆をしていないか
- 引用元のURLとサイト名などが書かれているか
このうち一番難しいのが、1の必要不可欠であるかというポイントではないでしょうか。というのは記事に必要かどうかというのが、はなはだ主観的なものだからです。必要性があったから引用したということが解るように、この引用からこれこれのことが解るなどといった文章をプラスすると、トラブルを防ぐことになることでしょう。
あと2との関連性も浮かび上がってくるのですが、自分が書いたオリジナルテキストがほとんどなく、あとはまるごと他人のテキストをコピーして掲載するのはもちろんNGです。必要性も感じられない上に、文章の量の主従が逆になるような引用の仕方は避けましょう。
3に関しては、キュレーションメディアだと引用だということが解るボタンがあり、引用元を掲載する欄があるので、区別は明確にできることと思います。あと気を付けたいのが4で、コピーに見えないようにと引用したテキストを部分的に変えてしまうと、これは引用ではなくなってしまい、かえって問題になるので気を付けたいものです。
ルールを守ることで引用は可能!
引用というとコンテンツのコピーと混同されがちですが、コピーと引用は異なるので、ルールに従って行えば著作権侵害にあたらない引用は可能です。