BtoBにおいても、顧客の購買行動に、オンラインでの検索・比較が含まれるようになりました。企業はインターネット上で顧客が求める情報を提供しなければ、選ばれることが難しくなってきています。そこで必要となるのがSEO対策です。
SEOとは、Search Engine Optimizationの頭文字を取った言葉で、日本語では検索エンジン最適化と訳されます。SEOは、ねらったキーワードが検索エンジンでの検索結果の上位に表示されるよう、サイトやコンテンツを適切にチューニングする一連の施策のことです。
検索エンジンでは、上位1位〜5位までのクリック率が80%を占め、上位に表示されなければ顧客の流入を見込めません。SEO対策は、インターネット上で企業活動を行うのであれば、もはや最優先で取り組むべき施策です。
そこで今回は、とくにBtoBにおいてSEOをどう進めるといいのか、5つのステップとポイントを解説していきます。
検索エンジンによる情報収集が当たり前の時代
BtoCで消費者の購買行動の中心がオンラインに移行したのと同様に、BtoBにおいても展示会やベンダー・メーカーの営業担当者を介した情報収集が当たり前の時代は、もはや終わりを告げました。
MEDIXが実施した『2020年版IT製品選定者アンケート調査』の結果によると、認知のきっかけとなった情報収集源として最多だったのは「検索エンジン」となっています。さらに2015年にThink with Googleが公開した「The Changing Face of B2B Marketing(変化するBtoBマーケティング)」を見ると、ネット利用担当者の90%が、特定のベンダーを見つけるまでに平均12回もの検索を行っていることがわかります。
Googleは同レポートにて、「購買プロセスにかかわる人は、購入先のWEBサイトにアクセスした時点で購入意思決定を57%終えている」とも述べました。これは、BtoB企業のマーケティングにおいてはとても有名な調査結果です。この結果から、検索エンジン上に自社のコンテンツがなければ、比較検討の土台にすら上げてもらえないことが明らかになりました。
とくにコロナ禍のもと、展示会や営業担当との直接的なコンタクトの機会が減少していることを考えると、情報収集のオンラインへの移行はますます加速すると予測されます。BtoB企業であっても、SEOに取り組まなければ、もはや生き残る道は残されていないのです。
BtoB企業のSEO対策はオウンドメディアの運用が有効
BtoB企業がSEOに取り組むのであれば、オウンドメディア(コーポレートサイトや自社ブログ)を運用し、SEOをきかせたコンテンツを公開するのが有効です。
情報収集のデジタル化が進み、見込み客は情報収集や業者選定の際には必ずといっていいほどコーポレートサイトを訪れます。質の高いコンテンツを配置しておけば、情報を提供するとともに信頼性のアピールも可能です。
複数の事業を運営している企業については、コーポレートサイトとは別にオウンドメディアを立ち上げるのが有効です。ターゲットが異なる複数の事業を、ひとつのコーポレートサイトにまとめてコンテンツを公開してしまうと、雑多な印象になるうえ、顧客にとっても興味のないコンテンツと接することになりユーザビリティが下がります。
そうであるなら事業ごとに自社ブログを別ドメインで立ち上げがほうが、ターゲットにあわせた専門性の高いブログになります。Googleはサイトの専門性を高く評価するため、SEO対策としても効果的です。
BtoB企業がSEOに取り組むうえでのポイントはコンテンツ数より質!
BtoBの場合、BtoCと比べてビジネスにつなげられるキーワードの数が少ないことが特徴です。
商材の専門性が高いケースが多く、ターゲットの母数が少ないため検索件数自体も少なくなり、インターネット上でも競合との顧客の奪い合いが発生することが予測されます。そのため一つひとつのキーワードについて、確実に上位表示させるつもりでSEOに取り組まなければなりません。
Googleはユーザーファーストを掲げ、ユーザーに有益なコンテンツを高く評価すると明言しています。そのため上位表示されるためには、質を重視したコンテンツを作り込むことが重要です。さらに上位表示されたコンテンツについても定期的に検索順位を検証し、上位を維持できるようにリライトすることが欠かせません。
BtoBにおいては、やみくもにコンテンツの数を増やすことより、質を上げることに注力するよう心がけるようにしてください。
BtoB企業のSEOに取り組むための5つのステップ
ここからはBtoB企業がSEOに取り組むためのステップを、5つに分けて詳しく紹介していきます。
【ステップ1】キーワード選定
BtoBのキーワード選定において重要なのは、自社の将来顧客になり得るターゲットが検索するキーワードを抽出することです。
先ほど紹介したGoogleのレポート「The Changing Face of B2B Marketing(変化するBtoBマーケティング)」では、BtoBにおいては71%の人が、一般的なキーワードから検索をスタートすると述べています。最初から商品名そのものや、企業名から検索を始めないということです。
確かに課題の解決方法を探すのであれば、「答え」である商品名や企業名から検索することは通常考えられません。キーワードはターゲットが抱えている課題から想起できる言葉を洗い出し、適切に組み合わせることが重要になります。
たとえば給与計算システムを導入したいと考えている企業が、「給与計算 システム」といったキーワードだけで検索しているとは限りません。効率化を進めたいなら「給与計算 効率化」、ペーパーレスにしたいなら「給与計算 ペーパーレス」など、課題そのものをキーワードとして検索することは大いに考えられます。
自社のビジネスとは関係のない的外れなキーワードで記事やブログを書いても、上位表示しないばかりか、専門性の観点から検索エンジンの評価が下がってしまうことには注意が必要です。
Googleは幅広いテーマについて扱うサイトよりも、これ!と決めたテーマについて、網羅的に、深度をもって扱うサイトを「専門性が高い」とみなし、高く評価することを常に留意するようにしてください。
【ステップ2】サイト設計
キーワード選定を終えたら、サイト設計を行います。
BtoBの場合、最初のコンタクトで購入を決定することはあまりありません。BtoBにおいては、比較検討を行ったうえで稟議をあげて、決裁者が判断を下すプロセスを踏むことがほとんどであるためです。
そのため最初の訪問で顧客に関心を持ってもらい、少しでもエンゲージメントを高める工夫が必要です。たとえばわかりやすくカテゴリを分類して、コンテンツ間を回遊してもらえるような仕組み作りを考えましょう。
前項でもお伝えしたとおり、顧客は商品名や企業名では流入してきません。課題に紐づいたページにランディングすることがほとんどです。そのページをひと通り見たあとに、内部リンクやカテゴリをさかのぼり、関連する有益な情報がないかを検索しやすい作りにしておきましょう。そうすることで回遊率だけでなく、顧客の評価も高まります。
顧客が役立つサイトと評価すればエンゲージメントが高まり、運営企業がどんな会社なのかを知りたくなります。そして最終的には製品を比較対象のリストにいれてもらうことにつながるのです。
【ステップ3】コンテンツ制作
サイト設計が済んだら、カテゴリごとに分けたキーワードに基づいて、コンテンツを制作していきましょう。
Googleは、ユーザーファーストの理念に基づき、ユーザーの課題を解決する記事を高く評価する姿勢を貫いています。そのためコンテンツを制作するときには、顧客の欲求を読み取ったうえで、ニーズを満たすものを考えることが大切です。
メインで設定したキーワードのほかに、検索結果の最下部に表示される「関連キーワード」や、検索窓にキーワードを打ち込んでいる最中に表示される「サジェストキーワード」を活用すれば、顧客のニーズに深く応えるコンテンツに近づけます。
SEO対策を施し検索結果の上位表示を目指すのであれば、コンテンツを制作する段階で検索エンジンの仕組みをよく理解し、技術的にも対応したものにしなければなりません。
日本では、検索エンジンのシェアはGoogleとGoogleの検索アルゴリズムを利用しているYahoo!の2社で90%以上を占めています。そのため検索上位を目指すためにはGoogleのアルゴリズムを理解し、Googleが求めるコンテンツを制作することが大切です。
Googleではウェブマスターブログやウェブマスター向けガイドラインで、優良なコンテンツを作るときにチェックすべき項目を公表しています。
「SEOライティング17のチェックリスト|Google公開情報をもとに解説」では、SEOで上位表示するコンテンツを制作するために、とくに重要と考えられる項目をピックアップして解説しているので、ぜひ目を通してみてください。
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【ステップ4】分析
どんな施策であっても、効果検証を行いPDCAを回していくことが大切です。SEOにおいても、コンテンツを公開したら、検索順位を日々チェックするようにします。順位のチェックはGRCなどの検索順位チェックツールを活用するといいでしょう。毎日の検索順位変動状況を折れ線グラフでチェックできて便利です。
検索順位は、コンテンツの質だけではなく、ドメインパワーの影響も受けます。ドメインを取得するところから始めた場合には、成果が出るまで早くても半年はかかると見込むようにしてください。既存サイトの場合では、3カ月から半年ほどかけて順位が落ちつく傾向にあります。
アクセス解析ツールであるGoogleアナリティクスや、サーチコンソールなどのサイト分析に役立つツールも必ず同時に導入し、多角的に分析するようにしてください。
【ステップ5】改善(リライト)
コンテンツの公開から半年を目処に、検索順位が落ちついてきても上位表示しない場合には、リライトを行います。
リライトするときには、まずはステップ3の執筆時点で行ったように、関連キーワードやサジェストキーワードをチェックしてみてください。執筆時点で対応できていたとしても、数カ月すると直近の状況により変わっていることがあります。
あわせてサーチコンソールで、制作したコンテンツに設定したキーワードと、実際に検索されているキーワードにズレや乖離がないかもチェックしましょう。どちらも今のコンテンツで対応できていない要素が発見できれば、コンテンツに取り込んでリライトします。
ヒートマップツールを使って「見出しの順番を入れ替える」「読み飛ばされている箇所に図を挿入する」などすることで、読了率が上がり検索順位が向上することもあります。ヒートマップツールはサイトのどの部分がクリックされたのか、どの部分で訪問者が離脱したのかなどを視覚的にわかりやすく表示してくれるツールです。Wordpressでサイトを制作しているなら、まずはAurora Heatmap(オーロラヒートマップ)をプラグインに導入するといいでしょう。
ほかにも関連性のある記事同士を内部リンクでつないで情報を補強することで、検索順位が向上することもあります。「SEOライティング17のチェックリスト|Google公開情報をもとに解説」を再度読み返し、外部と内部の改善を、同時に進めてみてください。
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SEO(検索エンジン対策)は長期的な資産になる
ここまで解説してきたステップを踏んで制作したコンテンツは、成果が出始めれば長期的に良質なアクセスを呼び込んでくれます。
BtoBでは広告費が高騰していて、WEB広告で1クリック獲得するためには100円程度必要とされているのが現状です。しかしSEOで上位表示した複数のコンテンツが、たとえば月間5万PV獲得するようになれば、5万PV×100円で、月間500万円の広告費と同じ働きをすることになります。
しかもWEB広告から流入したユーザーと比較すると、SEOから流入したユーザーは、コンバージョンする確率が高いといわれています。それはWEB広告は初めから広告と認識するためユーザーはなかなか心を許さないのに対し、自然検索で上位表示された記事は信頼性が担保される傾向が強いためです。
SEOは効果が出るのに3カ月から半年以上かかる中長期的な施策であるため、はじめのうちはコンテンツに時間と労力、費用を投資し続けることにリスクを感じるかもしれません。
しかし冒頭でも解説したように、多くの企業が情報収集の方法を、オンラインにシフトしています。インターネット上にコンテンツを用意し、検索結果の上位に表示されなければ、情報収集する企業の目にとまらず、選択肢に入れてもらえることはないでしょう。
経済産業省がDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、企業においてもコロナ禍により望む・望まないにかかわらず、急速にデジタルシフトが進みました。競合他社に先んずるためには、多少のリスクをとってでも、できるだけ早くオウンドメディアを運用し、SEOに取り組むことをおすすめします。
まとめ
BtoBにおいて、SEOをどのように進めていけばいいのか、5つのステップに分けて詳しく解説してきました。SEOに取り組むときには、以下の3点をとくに意識するようにしてください。
- 自社の将来顧客になり得るターゲットの課題を解決するキーワードを選定する
- ユーザーのエンゲージメントを高められるサイト設計を行う
- 効果検証を行いPDCAを回して改善を進める
かつて展示会やベンダー・メーカーの営業担当からの情報収集が中心だったBtoBにおいても、オンラインシフトは急速に進んでいます。これからの時代、インターネットで情報提供しなければ、生き残りは望めません。
SEO対策を施して制作したコンテンツは、長期的に集客する良質な資産となります。効果が出るまで時間とコストがかかるリスクはありますが、競合に先んずるためにも、できるだけ早くスタートすることを検討するようにしましょう。